彼女
恋愛とは不可解である。
私の想像をはるかに越えたモノがそこにはあるのだろう。
先日、久しぶりにモスバーガーに行った。
そこは2階が禁煙席だった為、私は2階の窓際の席に座り、
お気に入りのフィッシュバーガーを頬張っていた。
何気なく窓の外を見ると、細身の男が立っている。
片手に携帯を持ち、道行く人を観察しているようだ。
ビタっとした丈の短いジーンズ、ケミカルウォッシュだろう。
ヨレヨレな黄色の長袖シャツ。
茶色の髪は短めサラサラストレート。
そして白く大きなマスク。
閉店している八百屋のシャッターの前でひたすら人を観察している。
あきらかに怪しい。
私は、彼を観察する事にした。
・・・10分程経過しただろうか
フィッシュバーガーはとうに食べ終わっていた。
今は氷で薄くなったコーラをちびちびと飲んでいる。
彼は人が通った時に限って電話をしているようだ。
人の流れが来ると電話をし、その流れが過ぎると電話を切る。
しばらくして、電話をするフリをしているというのが分かった。
でも何故・・・?
彼をじっと見ながら、しばらく考えていると
その刹那、
突然彼の目が私を捉えた。目が合ってしまったのだ。
今までに無かった顔、、目を見開いてこちらを見ているようだ。
とっさに彼から視線を外す。
・・・・・・・・・しばらくしてまた窓の外を見る。
・・・まだいる。
次に目があったらまずいな・・・と思い、人の流れを見るフリをして、
彼を再度観察する。次は目が合わないように。
彼の視線の先には下着屋がある。
・・・まさか下着屋から出てくる女性を狙っているのか!?
これはまずいぞ、何とかしなければ!!
そう思った矢先だった。一人の女性が彼に近づいて来た。
とても綺麗な女性だった。
彼と少しの間立ち話をした後、2人は手を繋いで歩き出した。
どうやら彼は恋人を待っていただけだったようだ。
あんな男に、あんな綺麗な女性。
なるほど、彼はとても良い人なんだ。そうなんだ。そうに違いない。
・・・なんだろうか、この敗北感。
恋愛とは不可解である。
そしてフィッシュバーガー片手に探偵ごっこで盛り上がっていた私。
む・・・虚しい・・・彼女が欲しいと思った。